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パーフェクトイド体の合併の完備化はパーフェクトイドか?
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Perfectoid体Kというのは、①完備で、②値群がRの中で稠密、③O_K/pO__K上でp乗写像が全射 という3つの条件を満たす時に言う。正標数の場合は、完備な完全体と言っても同じことである(O_K/pO_K=O_Kであり、しかも値群が稠密もO_K^p=O_Kから直ちに出てくる(離散付値は正で最小の付値を持つ元xがあると特徴付けられるので、x=y^pなるy∈Kがあると最小性に矛盾)。正標数のperectoid体と標数0のperfectoid体を結びつけるtilting対応(♭を取る操作と♯を取る操作が互いに逆写像になっている)と言うものがある。これをGal(K1^♭/K^♭)とGal(K^1/K)と同型というガロアコホモロジーを用いて得られる結果を合わせることによって、Perfectoid体の有限次拡大はPerfectoid体であることが示せる(Galois representation and (φ,Γ)modules p74参照)。これのdirect limit(体なので合併)を取ることで、代数拡大の場合にも、perfectoidの代数拡大がperfecoidであることは確かめられる。
本例の体は2つの代表的な(値群を同じくする)perftoid体の合併の完備化である。片方の体上合併は代数的だから、Perfectoidである。
これを直接確かめるなら、条件③について、整数環の剰余環を有限次拡大の場合のdirect unionで書いてしまって、有限次の場合に帰着させてしまうのが良いだろう。
なお、直接整数環を計算しようとなると分岐指数などもわからないので難しいと思う。
Perfectじゃない体のWitt環

極大イデアルが単項生成でないため、Witt環が付値環にならない例。L/Qpを有限次拡大、oをLの整数環、kを剰余体とする。kの拡大Bに対して、分岐付きWitt環W(B)_Lは標数0のlocal domainである。しかし、B:perfectという条件をつけないと、W(B)_LはPIDになれず、DVRになれない。この例は、perfctでない体のwitt環の極大イデアルが単項にならない例を与えている。なお、O_(C_p)^♭など、perfectなものを扱うことが多いが、そうでない場合はこういう巨大な環が出てくるのである。
F_2上の交代行列と2-Selmer群

F_2上の交代行列は、対称行列でかつ対角成分が0のものとして定義される。この問題は一見、線形代数の単純な演習問題に見えるが、実は楕円曲線のSelmer群と深い関係がある。具体的には、上記の確率P^Altは、Selmer群の2べき位数が指定された値を取る確率に対応している(https://arxiv.org/abs/2207.05674)これはA. Smithによる最近の研究成果であり、Selmer群上のCassels-Tate ペアリングを用いた解析により、ほとんどの楕円曲線についてGoldfeld予想が解決されたという画期的な結果につながっている。